水鷗流の技(十五代宗家の教え)
「刀はその先が少しでも触れれば斬れます。しかしその前に相手に届くことが前提ですが、実に難しいことです。相手も大木の様に動かず突っ立っていることはなく、必死で動き廻り、こちらを倒す機会をうかがっているのです。その相手を斬る為には、相手をつけた実戦訓練をしなければならないのです」
「形としては、昔のものをしっかり継承します。その形を先人たち同様、自分の中で完成させるためには、その形がどうして出来てきたか、過程をつきつめていく必要がある。すると、つまりは命を賭した実戦ということにたどり着くわけです。私が実戦の訓練をするのは、そこにあります。過程をたどってみたいです」
「刀を抜き出す方向は、常に一定です。腰に差した鞘が向いている方向、右前方へ抜き出します。刃を上に向けた状態で、切っ先数センチにある『帽子』の部分が鞘に残る程度まで抜き出します。そして、ここで初めて斬る方向へ鞘を傾けて、抜き打ちます」
「目安として、自分の刀が届くところは相手の刀も届くものと考えます。なので、相手の間合へ自分が入り込まない限りは、自分も相手を斬ることはできません。しかし、相手が先に刀を抜き出し、刀を構えていれば、刃の長さ、距離も計ることができ、斬ってくる瞬間というものを見極めやすい。相手が斬ってくるときは必ず腕が上に上ります。その瞬間を捉えれば、鞘離れの瞬間で相手を制することができます」